AIを利用する時代
1つ前の会社で、私が会社を辞めようと思い始めたのはちょうどいろんなAIのサービスが登場してきた頃でした。
AIといえばすでに携帯電話業界でAppleのSiriやdocomoのしゃべってコンシェルなどがありましたが、
時期的にはその後にIBMのwatsonや、MicrosoftのAzureがAPIでサービス提供を始めた頃になります。
人工知能・AIは機械学習の延長線上にあるものですが、それらを自分達でゼロから学習させて作るのは膨大な時間と手間がかかります。
それゆえに自分たちで研究開発するのではなく、利用料を支払って既存のサービスを利用するという形が主流となりつつあります。
そして元々会社はMicrosoftのAzureサーバーを利用していたので、「Azureの人工知能のサービスを利用して何かをやろう」と考えるのは自然な流れでした。
研究者への侮辱とも取れる発言
会社では月に1回社員全員を集めて、当月までの実績や今後の計画を発表し合う会がありました。
そんな中で社長による今後の事業戦略で「AIを利用したサービスを作りたい」という話題の中で問題の発言が飛び出しました。
「研究者がどれだけの時間と人手をつぎ込んで人工知能を作ったとしても、それだけではお金にならない」
「だからオレ達がそれを利用して儲けられるものを作っていこうぜ」
という趣旨の発言でした。
研究者達は自分でお金を稼ぐ事が出来ない
という侮辱とも受け取れる発言です。
研究者がお金を稼ぐ事を考えていないなんて、そんな訳ないじゃないですか、頑張って作ったものを利用してもらって利用料をこれから回収していくのですから。
そもそも0から1を生み出してくれた人達がいるから私達は仕事にありつく事が出来るのに、それに対する尊敬や感謝の意を感じません。
ましてや「新しいものを生み出したい」と意気込むエンジニア達を束ねる会社の社長の発言だとは思えません。
浅い戦略
そして肝心のAIを使った具体的な戦略はあるのかというと、
「ロボットにAIを繋いで、それをまとめたものを弊社サービスとして売り出したい」
というものでした。
確かにこの頃はsoftbankのpepperを筆頭に、

imjanuary / Pixabay
ヴィストンのsotaやSHARPのRoBoHoNなど、いろんな人型ロボットが出てきた時期でした。
それにしても「ロボットがあったら人工知能を搭載してみたい」というのは誰もが考えつくアイデアではないでしょうか。
そもそもロボットを研究開発している人には、自分達の手で「鉄腕アトムを作りたい」「ドラえもんを作りたい」などの欲求から始まった人達も多いのです、ロボットとAIを繋げたいと考えるのは自然な流れでしょう。
とはいえ社会人1年目の営業の新人じゃあるまいし、どうやって他社との差別化を図ってアイデアを練るのかという計画がないのは経営者としてどうなのでしょう。
そんな浅い戦略しかなく、具体的なアイデア出しは社員に丸投げし、プレゼンで人前で喋って手柄は自分のものにするという姿勢が社長というものなのでしょうか?
技術者・研究者へのリスペクトを忘れない事
社長のこんな発言が出る前から、私はいろんな理由ですでにこの会社を辞めるつもりでいましたが、この発言をもって「この会社を辞める」と固く決意した事を覚えています。
1を10にも100にも変えていく事がお金を稼ぐ事にとって大事ですが、0から1が生み出されなければそれすらも存在しなかったのです。
確かに今の時代はいろんなサービスが格安で利用出来るため、「自分達でゼロからすべてを作ろう」という考え方は古いのでしょう。しかし
新しいものを生み出してくれた研究者への侮辱
新しいものを生み出そうとしている技術者へのリスペクトのなさ
そんな他者を見下した目線で新しい価値を世の中に提供していける会社になれるでしょうか。
相手を利用する事だけを考えているようでは協業してくれるパートナーを得る事なんて出来るでしょうか。
そしてそんな経営者のもとで働きたいと社員が集まってくるでしょうか。
外にも身内にも常に感謝とリスペクトの気持ちを忘れない事が大事なのです。